なんななナンセンス

益体もないナンセンスなことを、ある程度は掘り下げて考えた

東京五輪新種目「モデルルーム見学」


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わーキレイなお部屋。ねぇここにしましょー。
えぇー、ちょっと天井が低いんじゃないかな僕は自分で言うのも何だけど背が高いんだ。

もっとグレードが高い部屋にすると天井も高くなるんですって。ねぇそっちにしましょー。
えぇー、しょうがないなあ。まあ高性能なシステムキッチンだからお料理の味も期待できるしね。

何言ってるのそんなわけないでしょ勝手に期待されても困るから今後も毎日レンチンよ何夢見てんの。
えぇー。

分譲マンション購入希望のご夫婦選手がモデルルームに来店し、最も成約見込みが高いと営業担当に思わせたご家族が金メダルです。 質問、要望、世間話、予算相談などを通じて数値化されたアピールポイントを加点し、合計得点で競いましょう。

大会規定としてモデルルーム見学選手一家はリアル家族であることが出場資格。夫婦は婚姻届を提出してから4年以上に及ぶ円満生活を本当に送っていること。仮面夫婦や偽装結婚はNG。IOCと提携する興信所ネットワークの追跡調査と戸籍調査によりウソはバレます。子供の有無は問いませんが、子連れで入店したほうが購入感が増すこと、子供部屋について要望を示すといったアピールポイントを増やすことができます。

「もっと高級なメーカーのシステムキッチンに変更できるかしら?」 「書斎の棚は材質を味のあるキューバン・マホガニー材にしたいのだが」 営業担当への質問内容は事前に吟味しておくとよいでしょう。可能な範囲で上級グレードを希望し、営業成績へ貢献しそうな見学をすることが高得点への近道です。

なんでもかんでも高級住宅の条件を並べ立てて媚びれば良いというわけではありません。冷やかしに思われないようリアリティある疑問点を用意しておくべきです。「帝国ホテルのスウィートルームみたいにしたいわ」などと上質な料理にぶちまけたハチミツのような幼稚にとってつけた希望はつまらない冗談と受け止められ加点されません。ウソや見栄っ張りは見破られ、全世界に無様な性格が高画質で配信されるでしょう。

どんなモデルルームに案内されるかは競技が始まらないと分からない仕組みです。荒唐無稽なモデルルームを提示されても成約の気配を醸し出す臨機応変さが求められます。ドア同士が干渉しまくり、部屋の真ん中に謎の柱、4LDKでシャンドレ無し3点ユニットバス、窓がない、床に置いたボールが勝手に転がる、オール電化なのにMAXで15アンペア、ワンルームにベッドが3つ並んでる。どれも明らかにムチャぶり。でも家族総出で快適に住む方策を捻り出しましょう。住めば都の実証をお願いします。お忘れかもしれませんが、モデルルーム見学はオリンピック競技。ギブアップは次回オリンピック出場が絶望視されると考えて差し支えありませんから。

なおモデルルームのトイレで脱糞は即刻失格。一発退場。 だってオリンピックで用意されるモデルルームの水回りには排水機能なんてありませんから。一般的なモデルルームで本物のマンションの一角を使ってたら一応は所用を足せるかもしれませんが。あらかじめお子様とご自身の御用はオリンピックスタジアム内の特設トイレにて済ませておいで下さい。

水の流れないトイレに足された固形物を無表情で片付ける営業担当役五輪スタッフの心象を考えた立ち回りで金メダルを目指しましょう。