一切の行列が禁止されました。
まるで人気店の代名詞のように行列を有り難がっていた繁盛店様。
及び、彼らをクライアントとしていた広告代理店の皆様。
今後、この行列禁止特区では別の手段で流行をアピールしていただくようお願い致します。
消費者市民の皆様。
行列なんて無いほうが良いに決まってる、時間の無駄、と思うのは当たり前のことです。
行列がない世界を快適と感じて頂けるでしょうか。
むしろ今まで通り、大人しく並んでいるほうが生活しやすい、と感じるかもしれませんね。
実際に禁止して試してみましょう。
せっかくの特区制度ですからね。
人気店は、禁止された行列に代わって、違う方法でお客さんを捌くことになります。
わりと常識的というか、地味な変化で済みそうな気がします。
完全予約制の法律相談所
もう全国の行列のできる法律相談所は廃業も同然です。
予約のできる法律相談所に衣替えしましょう。
でも予約取れるのが3ヵ月後とかだったら、行列に並んでる感覚がしてきますよね、実質。
そもそも法律相談所とか弁護士事務所って、基本的にアポイント取ってから行くような・・・
ちょっとくらい行列が出来なくなったからって、人気まで落ちるとは限らないからへーきへーき。
完全予約制の人気ラーメン屋
ラーメン屋に行列ができる時代は幕を閉じました。
これからは屋台だろうと大盛り野菜マシマシ店だろうと、完全予約制ですよ。
整理券を配りますので、指定された時間帯にお越しください。
メニューは事前に伝えておきます。
提供時刻と数量を予め把握できる仕組みを活かして、アツアツのラーメンをジャストインタイムで提供致します。
これまで以上のご来店をお待ちしております。
なお、いくら美味しくても、伏せ丼が禁止なのは行列禁止特区であっても変わりませんのでお気をつけ下さい。
整理番号チケット制が普及
ボタンを押すと、番号が書かれた紙切れが出てくるアレ。
銀行や市役所、携帯ショップでもありますね。
行列が消えたこの特区では、順番待ちが発生しそうなあらゆるサービス現場で発券機が普及します。
人気クレープ屋さんでも、夜の焼肉屋さんでも、コンビニのレジでも。
完全予約制のコンビニなんて、不安しか感じませんね。
「2番目にお並びのお客様、こちらのレジにどうぞ」
と呼ばれることはなくなりました。
「154番の整理券をお持ちのお客様、こちらのレジにどうぞ」
なんて堅い言い方。
あなたと、コンビに、とか言ってたのに。
親しみやすさはどこへ。
これに伴って発券機の売れ行きが爆発的に伸び、発券機メーカーの株価が急騰。
逆に行列が禁止されたことによって損失を蒙った業種は少数を除いてほぼありませんので、プラスの経済効果が生まれると考えられます。
発券機という、マニアックな特需が生まれました。
電車から自由席が消滅、鈍行列車も全席指定
自由席車両で座るために、プラットフォームで列を成す光景はありません。
毎朝の混雑を極める通勤電車も、皆さん落ち着いて自分の予約席に座り込みます。
ぎゅうぎゅうの満員電車は消滅。
代わって満席電車が一般的になります。
帰省シーズンやゴールデンウィークには電車の指定席や満席になることなど当たり前ですので、満席電車は特別なことではありません。
ようやく静かで平和な朝が訪れたようです。
JR行列禁止特区線の中の限定運行ですが。
整理券制でも大量の行列が発生する握手会は全面禁止
発券機とて万能ではありません。
来場者数万人を誇る大規模なアイドルイベント等では、空前の大行列が発生しがちです。
こうなると、いくら順番や時間を指定しても待機列はできてしまいます。
全国に数万人以上いる握手券を持ったファンの方たちが僅かな期間に一箇所、正確には一人の前に集まるのですから当然ですね。
残念ながら、行列禁止特区に例外はありません。
この他、特定の体感型アミューズメント施設も建設許可が下りるか望みは薄そうです。
千葉県で最も栄える治外法権である夢の国では1時間前後の行列待ちが常態化していると聞きます。
時間帯指定券であるファストパスを取得すれば行列を避けられるようですが、全ての来場者がファストパスだけで遊べる仕組みは難しいでしょう。
さらに早く乗れるスポンサーラウンジを利用するとセーフかもしれませんが、余程のVIPかコネがなくては入れないようです。
行列禁止制度を充分に承知する前に、特区へ引っ越してくる人が後を絶ちません。
その結果、握手やスプラッシュマウンテンで遊べない不満を持つ住民が、抗議のために。
行列禁止特区を管轄する区役所前に殺到します。
世界で一匹の齧歯類に会いたい、推しメンと握手したい、その強いお気持ちは分かりますが。
ここは区役所です。
そんなに大勢で訪問されては、入り口に行列が出来てしまいます。
皆様の行列禁止を解禁してほしいとの要望を聞き届けようと思いますので。
こちらの発券機から整理券をお受け取りになり。
どうぞ、呼び出しのアナウンスがあるまでロビーにてお待ちくださいませ。