雪虫って名前、可愛いですよね。よく秋の終わりの北海道に飛んでます。
本州の方、見たことありますか? 姿も名は体を現しているようで、かわいいんですよ。
身体に白くてふわふわしたものが付いています。ここは触るとネバネバします。なんだか、溶けかけた白いろうそくのロウみたいな感じで。
白くてネバネバしたもの…
あ、でも雪虫って変なニオイしないから。ヤらしくもないからーっ
世界中から北海道に雪虫ハンターが殺到
この可愛い虫がお金になりましたとさ…って、世界中から金の亡者が集まりすぎィ!
ゴールドラッシュならぬ、雪虫ラッシュ突入。 秋口になると全世界から腕自慢のゴールドハン…いやモンスターハン…いやいや雪虫ハンターが集結します。
雪虫は飛ぶのが絶望的に下手くそなので捕まえるのが簡単。その辺適当に歩いてても服にくっつく。ハンターなんて大げさな呼び方しなくても、一般人がどこのご家庭にもある洗濯ネット、レースカーテン、全身タイツなど網状のものを手にブンブン振り回すだけで一定数の雪虫を捕獲できちゃいます。
こんなにカンタンな獲物だからこそ、効率よく一網打尽にすることが肝心。雪虫ハンター向けに虫取網と虫カゴがバカ売れ。ゴールドラッシュの採掘現場で一攫千金を夢見て遠征してきた作業員にスコップとザルを売って大儲けしたようなものです。
道内のホテルやウィークリー、マンスリーマンションも雪虫特需に沸き返り。某国からの爆買い需要みたいなものですね。先行きを長期的に保証する客観的な材料はありません。あまり熱を上げないほうが身のためです。
雪虫の発生する土壌は土地価格が高騰
街の中では路肩の街路樹が植わってる地面なんかに大量発生します。傍を通る車のフロントにも張り付くし、通行人の服、髪、顔、口の中にまでランダムに付着。
一方で笑いが止まらないのが、雪虫を発生させる土地のオーナー。あふれ出る通貨を独占できます。金の生る木の持ち主ですからね。
雪虫が繁殖する土地の値段が暴騰します。土地を売却した方が良いか、引き続き発生する雪虫を金融市場に出荷して得られる収入を比較しましょう。実際に収穫が見込める雪虫の売値や、来年以降の雪虫発生数を見積もるプロの業者が雪虫コンサルタントを称する流行が発生。
コンサルタント? 飛ぶのが超絶へったくそな雪虫を避ける方法とか、自然発生を防ぐのに有効なオススメの殺虫剤とか、雪虫が服にくっついた後に残る白い蝋っぽい汚れの落とし方みたいなライフレシピも知らなくはないんですが、ぜんぜんお金にならないのでパス。
雪虫被害が解消、風情がなくなるとの不満も
雪虫は北海道で毎年、冬の訪れを告げる虫として親しまれてきました。 ところが雪虫本位制の導入によって乱獲が進み、急速に絶滅危惧種化。レッドデータブックへも直ちに雪虫が登録されて希少種に。
北海道は雪虫絶滅防止へ向けて捕獲制限を実施、激減した雪虫を保護しようとする機運が高まります。雪虫捕獲業者が摘発され、雪虫養殖事業のための手厚い公的補助が整備されました。 まもなく自然発生した通貨を捕獲するリスクと不確定要素の高さが指摘され、国による雪虫管理体制が完成します。
厳重な警備と温度管理された造幣局の中で、雪虫は生まれ増えて消えていきます。 雪虫銀行券が雪虫の現物の代わりに流通し、本物の雪虫を見ることは無くなりました。
雪虫は害虫から金虫に出世してちやほやされ、益虫として管理される運命を辿ります。
そして北海道の風物詩が一つ減り。
道産子の皆様からは冬前の風情がなくなったと若干の不満が聞こえてくるようになりました。