んー、ニンニン。
あんなに素晴らしい忍術を、世渡りに使えたら。
もう世の中楽勝ですよ。
書店のビジネス書棚を埋め尽くしているどこぞの十把一絡げの仕事術なんて、忍術に比べるとね。
全然、術なんて呼べないんじゃないかと。
例えば追っ手をまくのに、タクシー使うとか、狭い路地入るとか、交番に駆け込むとか、いちいち大げさ。
撒菱(まきびし)まけばいいじゃんと。
競合他社はこっそり尾行なんて当たり前のようにしてきます。
敵対勢力のお得意様を調査するなんて、汚ねえ大人達のキホンのキですからね。
こっそり追いかけてくる企業スパイを煙玉で煙幕張って防ぐとか。
煙に捲いてこそニンジャ。
忍びの本領発揮。
でもこのくらいは普通です。
今どき、日本全国どこの探偵事務所でもやってます。
とはいえ、いつまでも忍んでばかりでは顧客に自社をアピールできませんから。
営業上手な他社に仕事を取られてしまいます。
忍術も結局は、将軍から仰せつかった目的を達成するための手段。
今月の営業成績目標を超えるため、古来より伝わる忍術ツールを活かしていきましょう。
忍び足で出勤、着席
朝の挨拶なぞ、もっての他。
そんな腹から声出して物音たててたら、居場所を悟られてしまうじゃないですか。
ダメダメ。
忍者って、そんなことしません。
社内といえど、どこに競合他社のニンジャが潜んでいるか油断なりませんからね。
(仲介ビジネスで利ざやを中)抜き足、(帰りのタイムカードを遅めに)差し足ですよ。
でもってプライド高いSI☆NO☆BIたるもの、社畜じゃあるまいし、黙々と座って書類作成なんかしていません。
周りの同期に存在を気付かれかける頃には、外勤という名の隠密スパイ行動へ出向く準備が整っています。
本当はずっと社内の物陰に潜み続けて定時を待ちたいところですが、歩合制忍者の辛いところです。
朝セットしたヘアートニックウォーターの残り香だけをオフィスに残して、忍者は去ります。
煙玉でクレーム対応
サラリーマンの敵は、競合他社ではなくクレームです。
目の前のクレームこそが真の敵です。
競合他社を敵だと思ってるのは、ぶっちゃけ経営陣だけです。
みんな建前建前。
サラリーマンにとっての敵のひとつは、自分の仕事の邪魔をする人です。
つまりすぐ他人を使おうとする同僚や、話の通じない上司なども敵です。
だから忍者にとって大事なことは、すぐそこにいるクレーマーをいかに煙に捲くかだといえるでしょう。
今こそが忍びの里で大量生産された煙玉を、リノリウムの床に叩きつける時です。
忍者ならこの現代にリアルに煙玉を炊いてスプリンクラーを作動させるくらいお手の物。
室内なのに天井からゲリラ豪雨に遭遇したら、さすがのモンスタークレーマーもドン引き。
もしも濡れた衣服にまでいちゃもんつけてクリーニング代をせびり出したら、しめたもの。
そこから先はテナントビル管理会社のクレーム担当者に引き継ぎましょう。
忍者は引き際を分かってる
管理会社に連絡後、肯定も否定もしない程度に時間稼ぎしとけばOK。
そういえば忍者って、時間稼ぎ技が上手いですね。
某県にはリアル忍者サラリーマンも実在しているそうじゃないですか。
まあ忍者も結局は将軍の部下ですから。
戦国時代を生き抜いてきた一族。
トップがしょっちゅう入れ替わるなんて日常でした。
上司や社長の機嫌ごときで忍術の冴えが鈍ることはありません。
一身上の都合を押し通したい瞬間こそ、己のやりかたを貫くべきです。
筆ペンで流麗にしたためた退職届を矢文(やぶみ)にくくり付け、向かいのビルの屋上から社長のデスクを射抜いちゃうでござるよ。