サービス残業、ダメ、絶対。
お仕事の終わる時刻を定時といいますね。
その瞬間ちょうどに脱兎のごとく会社を出て来ることを、定時ダッシュと呼んだりします。
決められた時間に終業するわけですから、これは当たり前のことをしているにすぎません。
なのに定時ダッシュを特別なことのように感じるとしたら、それは会社側に都合の良いように振る舞わせられているこの社会の風潮に毒されている証拠ですよ。
自覚しましょう。
定時ダッシュは日本から全世界へ向けてアピールしても良いくらい健全でクリーンな退社の仕方だということを。
来たる2020年。
以下の内容で、東京オリンピックに正式な新種目として採用されることが期待されています。
競技会場は規定の一般的なオフィス
定時ダッシュ競技の舞台は、とある島国で一般的なオフィスビルの一室、が忠実に再現された開催国内のオフォスです。
無機質な白い蛍光灯。
無機質なデスクとイス。
会社員のご経験がある方ならお分かりかと思います。
ほら、あの職場のああいう感じです。
いま、学生の方。
そのうち嫌でも職場環境ってやつを思い知るだろうから、もうちょっと待っててね。
公式ユニフォームのスーツに身を固めた各国選手
オフィスでサラリーマンがする格好といえば、やはりスーツですね。
日本人は言うにおよばず、イタリア人だろうと、エチオピア人だろうと、Yシャツネクタイに黒または紺のジャケットに限ります。
オリンピックだからと新調した一張羅である必要は全くありません。
むしろ着古してくたびれたヨレヨレスーツこそ、エンターテイメントとしての定時ダッシュにふさわしい。
OL女子はタイトスカートのダッシュ力に難があるため、ピッチリしたパンツスーツが認められております。
また、来たる沖縄オリンピック開催時には、ビジネスの現場でも実際に使用されているかりゆしウェアが公式ユニフォームとなります。
デスクでイスに座った状態でスタンバイ
さあ、スタートの瞬間が近づいて参りました。
待ちに待った定時です。
本日もフルタイムで勤務した各選手、 早くも疲労の色が見てとれます。
定時ダッシュしたくてたまらない、誰よりも先に家へ帰りたい。
あせってはいけません。
最後の一分一秒までが勤務時間です。
勝手に立ち上がってはいけません、
自分のデスクでイスに座っていてください。
勤務中にも関わらず、不要な離席はサボリですよ。マイナス評価です。
次の人事評価で給与査定に響いてもよろしければ、どうぞ。
18時のチャイムがスタートの合図
18時ジャスト、社内に流れる定刻のチャイム音こそが、定時ダッシュ競技スタートの合図です。
社員に定時のタイミングを意図的に教えないで、サービス残業を誘発させるブラック会社とは違うんです。
デスクで勤労に励んでいた各国の社畜・・・いえ、選手たちは一斉にイスから立ち上がり、帰宅を開始します。
まず目指すのは、自分がいつからいつまで勤務したかを証明するタイムカードの打刻です。
フライングした選手は職務怠慢というペナルティが課され、100m走のように全員リスタートとなります。
周囲の冷たい目が痛いと思いますので、気を付けましょう。
タイムカードに長蛇の列ができ、過半数が脱落
席を立った選手たちはオフィスの入り口付近に設置されているタイムカード装置に殺到します。
終業時間を打刻するためです。
自分が働いた時間帯を証明することは、自己責任。
ビジネスもオリンピックも、結果が全てですからね。
我先にと、タイムカードの機械に自分のタイムシートを入れようとします。
しかし、ここで焦って他の選手を押し退けたりなどラフプレーに走っては、即失格。
そんなモラルに欠けた行動は、ビジネスの現場ではNGですよね。
おとなしく先着順に、まるで純粋な日本人の性格のように、行儀良く一列に並びましょう。
美しいですね。
エレベーター前に長蛇の列ができ、さらに過半数が脱落
カードをオフィスを出たら、その階のエレベーターに直行しましょう。
ここはオフィスビル。
帰宅するためには、エレベーターに乗る必要があります。
定時ダッシュの競技会場は通常、法人向けに事務所を賃貸している一般的なオフィスビルで比較的、上の階に設置されます。
三階とか五階くらいなら階段をかけ降りたほうがエレベーターより早いかもしれません。
が、それ以上の高さではエレベーターを使うのが無難です。
足腰を痛めては、翌日の仕事に響きますからね。
オリンピック選手といえども、スポンサーや補助金を得ていない人は、だいたい皆さんサラリーマンです。
明日を考えて生きましょう。
なお、2020年開催の東京オリンピックでは、日本でも1、2を争う高度と階数を誇る横浜ランドマークタワー最上階の70階フロアで定時ダッシュ競技が行われる予定です。
途中、上司や取引先とすれ違う時は必ず挨拶をしなければ失格
無事にエレベーターで地上へ出たら、次に向かう先は通勤してる人ならわかりますよね。
そう、駅です。
じゃあ最寄り駅まで全力疾走すればよいのか?
小学生の障害物競争じゃあるまいし、そんな単純な戦いではありません。
我々は社会人です。
いかに定時ダッシュ中といえど、わきまえるべき礼節は守りましょう。
どんな路上で、自社の上司や取引先の担当者と出会うか分かりませんよ。
もし、契約時にあれだけ礼儀正しく応対した社員が道端で。
出会ったあなたに目もくれず、スーツ姿で必死の形相で走り抜けていったら 。
挨拶ができないなどというレベルではありませんね。
どんなときでも立ち止まって踵を合わせ、いつもお世話になっておりますと 頭を下げ合うのがサラリーマンの鑑です。
定時ダッシュ競技中は、選手に関係がある実際の上司や取引先の人がコース内に秘密裡に配置されます。
彼らを無視して走り去ろうものなら、競技者としても社会人としても失格まちがいなし。
厳しい世の中ですねえ。
駅のプラットフォームに並ぶ時点で上位数名に絞られる
改札をSuicaのようなタッチ式電子マネーで通り抜けたら、ゴールとなるプラットホームの待機列エリアが目の前です。
なお今どきSuicaを用意していない選手は券売機でキップをお買い求め頂きます。
が、そもそも大幅なタイムロスになるだけでなく、帰宅ラッシュ時の改札なんて混雑を極めていますので、この時点で金メダルはおろか入賞も絶望的。
改札とホームの階が違う場合は、エスカレーターと階段の2択に迫られます。
最も早いと思われるルートはエスカレーターをかけ上がること。
ですが、一般客がローカルルールに従って左右どちらか片方に行儀よく寄ってくれているとは限りません。
まさか人を押し退けて進むなんて、ジェントルな皆様がするわけないでしょう。
混み具合を見て、階段ルートかエスカレータールートかを瞬時に判断する駆け引きも楽しみですね。
座席に最も早く着席できた選手が金メダル獲得
いよいよ定時ダッシュのフィニッシュです。
電車の座席への着席をもって、定時ダッシュのゴールとなります。
が、実際にはプラットフォームでの並び順で勝敗が決する模様。
最前列を確保できたら、誰よりも早く帰宅でき…る上に、メダル圏内がほぼ確定した喜びに感極まって涙目になってしまう選手も。
入り口となるドアは複数なので、最終的に金メダルは時の運なところがどうしてもあります。
そのあたりの判定は通勤電車に百戦錬磨の車掌さんが厳正にしてくれることでしょう。
おそらくオリンピックで唯一、ビシッとスーツでキメて戦う異色の競技。
どんなビジネスでも大切なのは、スピードです。
そう考えると、定時ダッシュも実に奥が深い。
趣味と実益を兼ねているとも言えますね。
見事上位入賞したメダリストには、乗車したまま車内にてメダルを授与してしまいまして、そのまま直帰の流れとさせていただきます。
明日の出社にガチで備えるのも、オリンピックの中では数少ない競技となりそうですね。