ちこくちこくー。
と駆けてくるパンをくわえた女子高生に曲がり角でぶつかりまくれる毎日が来ようとしています。
遅刻義務特区は、遅刻しなければならない特区。
早めに着いたり、時間通りに来ては怒られてしまいます。
禁止されていることが、逆に義務になる。
思えば、人類の歴史はその繰り返しでした。
勘違いしてはいけないのは、遅れて行く、であって、行かない、ではない点です。
学校なら遅刻で謝れば済むものが、欠席となると単位の取得に響きます。
会社なら無断欠勤であり、昇進どころか肩叩きものですよ。
遅刻義務とは、どんなに遅れてもよい代わりに必ず出席しなくてはならない、ということです。
でも、遅刻自体はし放題。
お寝坊さんで朝弱かったり、朝御飯やお昼のお弁当を作るのに忙しい人。
通勤通学で電車やバスの距離が長くて毎朝大変な人。
曲がり角で女の子と毎日ぶつかりたい人。
ぜひ、最寄りの遅刻義務特区へ。
会社や学校には遅れて到着
どんなに朝、コンビニで。
新発売のパンを悩んでたり、友達とお喋りしてたって。
いーんです。
どんどん遅れてください。
流行からもね。
ボサってたり田舎っぽかったり垢抜けない感じの方がむしろ好き。
なんていう層も最近は増えているそうですから。
それにほら、いつも遅れてくる子って、逆に可愛げがあるじゃないですか。
もー、いつも遅刻ばっかりしてー、しょうがないなー、みたいな。
最近はそういう欠点こそ萌え要素という風潮。
定時? なにそれ美味しいの? 電車やバスも遅延
朝9時を5分遅れたのは目ざとく注意するのに。
定時を五分過ぎて仕事しても誰も何も言わないばかりか。
もっとサービス残業してほしい目で黙ってこちらを見るのは勘弁願いたい。
公共交通機関も例外ではなくて。
電車がプラットホームへ入線するのも、当たり前のように遅れます。
ダイヤなんて常時、乱れまくって誰も時刻表を信用していません。
というのも電車やバスがほぼ必ず時間通りに発着するのは、世界を見渡しても日本だけだとか。
海外では数分の遅れはザラ。
時間感覚のユルい国では、数時間遅れた上に、担当者の気分次第でその日はバスが運休になったりとか。
具体的にどこの国、とは申しませんが。
むしろ時間通りに来たら、驚かれることもあるとか。
人との待ち合わせでも、予定の時刻前やピッタリに来ると、どうして時間通りに来たんだ、と憤慨されることもあるようです。
この感覚。
まさに、遅刻義務特区が想定している感覚と同じ。
他国ではもはや、特区ではなく全国に施行され済みの制度だったようです。
家賃や光熱費、給与、税金の支払いも遅延しよう
電気代、ガス代、水道代。
ちょっとやそっと滞納したくらいでストップするような器の小さい業者は、遅刻義務特区にはおりません。
遅れて当たり前、期限前に支払われても、え、そんな律儀に余裕を持って振り込んでくれなくてもいいんですのに。
とこちらの方が戸惑ってしまう有様。
給与が支払われない?
いやいやまさか。
遅れてるだけですよ。
支払わないとは言っていません。
いつまでに支払う、とも言ってないわけですが。
税金の滞納だって普通すぎて。
過去の滞納をさかのぼって支払いに来たのに、未来分までまとめ払いしに来たと勘違いされて、そんなことしなくていいと市役所で門前払いされる始末。
そんなんでやっていけてる遅刻義務特区のマネージメント。
とてもお役所仕事とは思えませんね。
遅れるのが当たり前だからこそ、早すぎるのが貴重な世界
じゃあ、早く来過ぎました。
それは損なことでしょうか?
いいえ、全然そんなことはなくて。
みんな実際のところ、どんなに耳障りの良い内容であっても。
義務になった瞬間、息苦しさを感じるものです。
そしてバレないようにそれの裏を掻こうと画策し始める。
遅刻が義務なら、あえて早く来たらどうなるか。
そう考えるのは、ごく自然なこと。
つまり、貴方だけではないんです。
朝早く出社してみたら、同じことを考えてた人が自分の他にいた。
くすくす。
あれ? 遅刻は義務ですよ? いいんですか?
そんなことおっしゃってる、あなたのほうこそ、こんな早い時間に来てて、いいんですか?
秘密の共有。
楽しいですよね。
そういうこと、普通はグレーゾーンでイケないことを隠しあうものですが。
遅刻義務特区であろうとなかろうと、余裕を持って早く来るなんて、本来とても健全なことのはず。
つまり、ここは。
人類が時間の束縛から解放された社会。
速く来ても、遅く来ても、どっちでも許され、誰も困らない素敵な世の中。
特区という限られた地域に留めておくには惜しい仕組み。
導入する自治体が唯の一つもないのは、どうしてなんでしょうね。
遅刻はいけないこと、という固定観念に囚われているのでしょうか。
疑ったほうがいいですよ。
それを自覚するのが、もはや遅かったかもしれないとね。