なんななナンセンス

益体もないナンセンスなことを、ある程度は掘り下げて考えた

東京五輪追加競技 「ドタキャン」


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ドタキャン。困ります。やめてほしい。こっちは用意して待ってたのに。時間通り来てほしい。期日に間に合わせて仕上げて欲しい。一旦した約束を反故にしないでいただきたい。キャンセルするならするでもっと早く連絡出来なかったんですか。そもそもドタキャン言いたいだけちゃうんか。

世界中で今日もドタキャンに対する怨嗟の声が渦巻いてます。その反応を楽しみながら北叟笑むドタキャニストを野放しにしてはおけませんよね。世界の大舞台で争われるドタキャン技術の高さを見せつけて罪悪感を助長しましょう。

1兆円の売上に結び付く大事な商談をドタキャン

30個を3000個と発注ミスしてキャンセルもできずツイッターで呼びかけて即日完売なんて茶番は今どき珍しくありません。そんな程度ではオリンピック出場など夢のまた夢。まず損害のケタが違います。この取引がドタキャンされたら会社が傾くどころじゃなく確実に倒壊する。そんなヒリヒリした緊張感が良いんじゃないですか。

数億円規模の損害くらい総合商社じゃ日常茶飯事。かといって100兆円とか仮定してもリアリティに欠ける。1兆円でどうでしょう。通常潜水艦一機の建設費用が500億から1000億円だし、原発一棟で3000億円前後ですから、キャンセルしたら致命的そうなお値段ですよね、1兆円。

大変申し上げにくいのですが、今回のお話は無かったということに。営業担当、プロジェクト責任者、取締役一同、融資元の銀行員、揃って顔面蒼白になりながら、ドタキャンを成功させて金メダルを獲りましょう。

10年越し大恋愛の末にプロポーズを「やーめたっ」

埋没コストという考え方があります。支払い済みのお金は返金できず戻ってこない。その埋没したコストを回収して「元を取る」ために更にお金を追加投資する悪循環が生まれます。恋愛にはお金を使いますがそれは理由をこじ付けて多少取り戻せるかもしれない。でも過ぎ去った時間はどう足掻いても無理です。

10年も時間を投資した大恋愛は必ず成就させないと。20歳から始まった恋も気づいてみれば30歳。アラサー女子としては焦ります。今から別の出会いに期待する? そんな希望的観測を本気でアテにできるほど夢見る年齢でもありません。絶対に彼のプロポーズが欲しい。でも怖くて聞けない、10年も待たせたその理由とは。

彼は2020年東京オリンピックに出場するドタキャニストでした。今から加えて4年後、彼女の年齢も34歳になり本当に後がないギリギリまで引きつけた末の、華麗なる「やっぱプロポーズやーめたっと」を狙っています。炸裂するドタキャン。五輪スタジアムで浴びせられるゲス野郎のブーイング。彼が刺されずに生きていられたら、表彰式で会いましょう。

我が子に「お前は実は私の…やっぱやーめたっ」

何かを言いかけられて、途中で止められるとすっごく気になりませんか。もう他のことが手につかなくなるほど。「ねぇ、ちょっと…いや、何でもないよ」何でもないなら初めから話しかけないで〜っていう。漠然と不安になるじゃない。

普段の何気ない会話ですらこんなに途中でキャンセルされると落ち着かなくなるのに、突然改まって呼び出され、慎重な面持ちで切り出されようものなら。夕食後、分別のついた息子または娘を茶の間に呼び出して父親が開口一番「そろそろお前に伝えておいたほうがいいかと思ってな」

「実はな、今まで黙ってたんだが」低い声で続ける父。隣で泣きそうになりながら目を閉じて俯く母。嫌な予感しかせず戦々恐々と引きつってる子供の表情も審査対象です。

「お前はな、実は私の・・・いや、何でもない」

おもむろに立ち上がり書斎へ戻る父親と口元の嗚咽を手で抑えながら台所に駆け込む母親。話は終わり。秘密はお預けです。ドタキャニストに取り残された瞬間の子供の反応に注目しましょう。意味不明だし、ぽっかりと空いた物足りなさ全開。それがドタキャン。

  ドタキャンは基本的に周囲の人を不幸にする大罪です。誰もやりたがらない。だからこそ追求してみる価値がある。とても迷惑旋千万なこのドタキャン競技を採用しなかったIOCは常識的な判断をしたといえますね。