子供の頃、テレビのまんが日本昔話で観たのをなんとなく覚えています。
大昔の人は雨水だけを飲んで生きてたそうで。
それを不憫に思った神様が雨の代わりに白米を降らせたところ、人々は大喜びで空から降ってくるご飯を食べたと。
一件落着、と神様が思ったのも束の間、満腹になった人々は余ったご飯で遊び始めました。
ご飯でサッカーボールみたいな球をつくって蹴ったりとかね。
これを知った神様は食べ物で遊ぶのはけしからん、と怒って、ご飯ではなく白くてよく似た雪を降らせました。
いつものように白いご飯かと思って食べた人々は一向にお腹が満たされないので、がっかりしましたとさ。
・・・みたいな、よくある話。
今、日本列島を覆っている大雪。
これ、昔はご飯だったんですねぇ。
ありえない話じゃありません。白くて粒々な見た目も似てるし。
大昔といっても、せいぜい数百年前ですよね。
なら、氷河期とか恐竜絶滅のサイクルに比べたら遥かに再び起こる確率が高い。
富士山だってもうすぐ噴火しそうな時期です。
今日の天気は晴れのち曇り、ところにより、ご飯。
外出の際は傘の代わりに、お茶碗をご用意ください。
世界の食料事情が一気に解決
毎年冬になると、雪が降る地域ではご飯が降ってきます。
この現象が全地球的に発生すると、食糧問題は解決します。
いえ、ご飯に合うおかずが不足するという意味では、完全に解決したわけではないかもしれませんが。
少なくとも、炭水化物については不足することがなくなりました。
昔の庶民のご飯は精米されていたわけではなく、玄米に近かったので、天候によっては炊き立ての玄米が降ってくるかもしれません。
玄米ならビタミン、ミネラル、食物繊維も同時に摂ることができます。
もはや毎日の主食はタダ同然。
これを機に世界的にパン食が激減します。
・・・かと思いきや、パナソニック社の販売するゴパンの需要が高騰。
生まれてからずっとパンを食べてきた人が、いきなりご飯に慣れられるわけがありませんからね。
各家庭ではゴパンをフル活用してご飯からパンを製造。
多少味が変わりましたが、これまで通りの食卓を無事に送り続けることができたようです。
ゴパンが無かったら、パン食文化圏では大規模な暴動が起きていたことでしょう。
第三次世界大戦を未然に防いだ功績を称えられ、ゴパンを開発した元三洋電機(現パナソニック)の開発チームにはノーベル平和賞が贈られました。
おめでとう御座います。
保存食の技術革新と普及
天から降って来るのは、精米されただけの硬い米粒ではありません。
ご丁寧にも、そのまま美味しく食べられる炊きたてほかほかご飯です。
ご飯が降るのは冬だけなので、その間に来年の春、夏、秋の分のご飯を貯蔵する準備をする必要があります。
災害時などに缶詰やレトルトパックに入った赤飯や炊き込みご飯が食べられるのは有名ですね。
こういう保存食を冬の時期にご飯を使って大量生産する業者が急増します。
自国内で消費するだけでなく、赤道地域など非降雪圏への輸出産業として隆盛します。
ご飯を保存食に加工するにあたって、アルファ化米という、お湯を入れるだけでほかほかご飯に戻せる技術があります。
お湯より時間はかかりますが、なんと水でも戻ります。
このアルファ化米、家庭でも布団乾燥機などを使って自作できることから、その手のライフハック情報がウェブ上に次々と公開。
長期の常温保存に耐えられるご飯保存食が普及し、それを美味しく食べるためのレシピがクックパッドに大量に投稿されます。
いくら保存食といっても、美味しくなければ誰も食べたがらないし、幸せな気分にはなれませんからね。
全国各地、どのご家庭でも一家総出でアルファ化米作りが当たり前に見られる光景となりました。
一方、手間のかかるアルファ化米加工を嫌がる人々は冷凍庫を使いました。
お米農家はブランド志向で生き残り
飲める水道水が潤沢に安定供給されていても、いろはすは飛ぶように売れます。
空気を吸うだけならタダですが、空気清浄機には一定の需要があります。
無料で食べられるご飯が空から降ってくるからといって、お米へのこだわりが消えてしまうわけではありません。
気象条件により降米するご飯の味にはバラつきがありますが、平均するとごく平凡な水準といったところです。
しかも雨水と同様、どんな成分が含まれているか正直いって分からない部分があります。
安全性と味覚の両面から、信頼できる土と農家の手によって育てられたお米は地上米と呼ばれ、降米と比較にならない高値で流通するようになりました。
まさに、お米農家の復権。
天から降ってきたお米によって、地面から生まれるお米の価値が見直される。
運命というか、皮肉というか。
なお海外では、美少女キャラクターをパッケージに印刷した萌え米が日本ブランドとして良い意味で勘違いされ、大規模な輸出産業に発展した模様。
TPP? なにそれ、おいしいの?
農家への補助金はスキー場へ
雪、もう降りません。
スキー場にも、今はご飯が山盛りに降り積もっています。
さすがにご飯の上をスキーで滑るわけにはいきません。
バチがあたりますから。
結局、屋内スキー場のように、人工降雪機の出番となりました・・・が。
リフトの運用保守だけでも出費に喘いでいた従来のスキー場に、高額な設備投資となる降雪機を導入できるはずがありません。
そこで、お米農家に充てられていた補助金が浮いていることに、目ざとい誰かが気付きました。
稲作農業は補助金に頼らず農協を介さずとも自活できるまでに、まっとうなビジネスとして復活しています。
地球上から降雪が止んだので、似たような予算配分が世界各国で行われたようです。
そこまでしてスキー場、維持するの? といった疑問の声も、世界中で上がりました。
でもね、どんな業界にでも一定の既得権益保持者というのは存在しているので。
それにスキーとスノボーは愛好者が非常に多いスポーツです。
色々ありながらも、ある程度は支持されるのでしょう。
ご飯がバイオマスエネルギーの原料に
トウモロコシやサトウキビのように、バイオマステクノロジーを用いてエタノールを精製する原料としても、ご飯は利用可能です。
決してご飯で遊んでいるわけではなく、人類が長期的に生存するために編み出した持続可能エネルギー技術ですので、神様もお怒りにはならないですよね、きっと。
かくて世界の食料難とエネルギー問題が一挙に解決してしまいました。
雪がご飯になっただけで。
すごくない?
これで産油国周辺で頻発する戦争もなくなる、と楽観できないのが我々人類でしたね。
適当に考えても、降米地域と非降米地域との間で広がる資源格差が新たな火種になることが分かります。
春になって暖かくなると、余ったご飯の腐敗処理が全世界的に問題となるでしょう。
そこから発生するメタンガスが大気中に充満して温暖化が一気に加速し、地球環境が一変するかもしれません。
やっぱり、イイ事ばっかりじゃないみたいだなあ。
と思う、最近麦ご飯にハマってるなんななでした。